1.ムギネ酸類・鉄錯体トランスポーターの基質特異性決定部位・活性必須部位の決定:オオムギから同定されたムギネ酸鉄錯体選択的なトランスポーターHvSY1とトウモロコシ由来のムギネ酸の他の金属錯体も輸送するZmYS1の基質選択性の違いを解明するため、それぞれに特徴的な6番目の膜外ループのペプチド(約40アミノ酸)が基質選択性に関与していることをキメラ体の輸送活性測定やCD測定により報告した(基盤C研究成果報告書)。本研究ではこのループ部分のNMR解析において、43ペプチドの2次元^1H-^<15>N相関NMRスペクトル(HSQC)を測定し、NMRピークのアミノ酸を同定し、CD実験と同様にHvYS1のほうがZmYS1より2次構造をとっていることを明らかにした。DPC(ドデシルホスホコリン)ミセル存在下でデオキシムギネ酸鉄錯体の滴定実験を行い、HvYS1のみループ後半部分のシグナルがシフトしたことから、この部分が膜に結合し、基質輸送に関与することが示唆された。また、HvYS1のこの膜外ループの377番目のセリンが基質選択性に関与している活性結果をアフリカツメガエルの卵母細胞で得られたので他のアミノ酸に関しても検討している。 2.ムギネ酸類標識体の合成:ムギネ酸の2'水酸基にプロパルギル基を導入して、クリック反応によりベンゾフェノン、クマリン、トリアゾールなどの標識体を作製した。これらが鉄錯体を形成することをフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FTICRMS)で確認した。HvYS1トランスポーターを発現させた卵母細胞の電気生理実験を用いて、これらのムギネ酸標識鉄錯体の輸送活性を測定した結果、ムギネ酸と同等ではないが、20-60%の輸送活性を有することが分かった。また、ムギネ酸クマリン標識鉄体を反応させた卵母細胞のみ細胞内で蛍光を観測したことにより、トランスポーターを介して取り込んでいることを確認した。今後はこれらの標識体を用いて、トランスポーターとの結合部位を明らかにする。
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