研究概要 |
1.ムギネ酸類・鉄錯体トランスポーターの基質特異性決定部位の決定:鉄錯体選択性の高いHvYS1のアミノ酸配列377番目のセレンをアラニンに置換したHvYS1(S377A)、そのアミノ酸に相当する選択性の広範なZmYS1の381番目のアラニンをセリンに置換したZmYS1(A381S)の1アミノ酸変異体遺伝子を導入したベクターを各々作成し、アフリカツメガエル卵母細胞(oocytes)にトランスポーターを発現させて、デオキシムギネ酸(DMA)のFe(III)、Cu(II)、Zn(II)錯体を基質として電気生理活性により、輸送活性を測定した。ZmYS1(S381A)はHvYS1同様にDMA-Fe(III)を選択的に輸送する結果を得たが、逆にHvYS1(A377S)はもとのHvYS1の鉄選択性が消失し、Cu(II)やZn(II)錯体も輸送するようになった。これらの結果を合わせると、HvYS1の377番目のセリンが鉄選択性に関与していることが示唆された。 2.ムギネ酸類・鉄錯体トランスポーターの精製:基質選択性の異なるHvYS1,ZmYS1トランスポーターの結晶化を目指し、昆虫細胞系の発現ベクターにYSトランスポーターの全長および糖鎖修飾アミノ酸変異体遺伝子を導入して、このベクターを昆虫細胞に感染、発現させた。これまでに、ZmYS1の全長、GFP無し、HISタグ付きでタンパク質の収量を上げることができた。東京大学山形助教との共同研究により、タンパク質濃縮液にデオキシムギネ酸鉄錯体添加有無と界面活性剤の条件検討などで結晶化を試みている。 3.ムギネ酸標識体の合成:合成したムギネ酸3'アクリジン標識体は電気生理実験や蛍光観察で活性を認められなかった。この結果により輸送活性のあったベンゾフェノン体に、リンカーでキャップとしてアクリジンを繋げたものを合成し、光親和標識体として使用できるか検討する。
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