研究課題
2008年のレッドリストに掲載された野生動物はおよそ45,000種にものぼり、緊急の対応が求められている。動物園など飼育施設においても、野生動物の新規導入は困難であり、小数集団での繁殖、遺伝的多様性の保全、動物福祉の実現は、深刻な課題となっている。本課題では動物園や国内の野外ステーションとの連携を活用して、非侵襲的なDNA採取法の開発に取り組むとともに、血縁や亜種判定の基礎となる多様性データを集積し、多数種、多数試料からなる詳細情報つきのDNA Zooを整備する。また性格評定、行動観察、認知などのデータと、ストレスや行動との関連が予想される遺伝子との比較により、ゲノム情報による野生動物の行動や繁殖の予測システムを構築する。22年度は、(1)DNAバンクの整備を目指して、新たにDNAを抽出した。(2)これらの試料の個体情報をさらに充実させるため、また飼育園館や飼い主の協力を得て性格評定を行った。さらに(3)DNAバンクの遺伝子多型解析を行った。(1)については、動物園や水族館で引き続き試料採取を行うと共に、国内の保全研究を行っている施設の協力を得て、野生のイルカやイヌワシの糞や羽根、また海外ではガーナやガボンにおいて野生の哺乳類や鳥類の毛、羽根、糞など、非侵襲的に得られた試料からDNAを抽出した。これまでに蓄積したDNA試料に、本年度は新たに2406試料を追加し、総計21,491個体のDNAを得た。(2)これらの試料のうち、チンパンジー、ゴリラ、イルカ、イヌ、ネコ、ゾウの性格評定を行い、性格と遺伝子の両方に種差や地域差を見いだした。(3)については、イヌワシ、ニホンザル、野生ネコで、マイクロサテライト領域の多様性の解析を行った。またイルカの神経伝達関連遺伝子に新たな多型を見いだした。
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2011年版:独立行政法人科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター
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