研究課題/領域番号 |
21310151
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
高村 典子 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (80132843)
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研究分担者 |
西川 潮 新潟大学, 超域研究機構, 准教授 (00391136)
柘植 隆宏 甲南大学, 経済学部, 准教授 (70363778)
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キーワード | ため池 / 外来種駆除 / 在来種保全 / 環境経済評価 / 生物多様性 / 選好 / 支払意志額 / 保全意識 |
研究概要 |
ため池の生物多様性に対する保全意識を高める要因を明らかにすることを目的として、兵庫県在住の一般市民30名を対象として審議型貨幣評価(Deliberative Monetary Valuation: DMV)を用いた実験を実施した。「ため池の生物多様性保全」をテーマとしたワークショップを開催し、専門家の説明や参加者間での意見交換の合間に数回のアンケートを実施することで、詳しい情報提供や参加者間の議論が支払意志額(Willingness to Pay: WTP)にどのような影響を与えるのかを検証した。また、ため池管理者や保全意識の高い市民が議論に参加することでWTPがどのように変化するかも検証した。具体的には、参加者を10名ずつの3群に分けて、1)専門家による情報提供の効果、2)ため池管理者や環境保護団体加入者を含めた意見交換の効果、3)個人の選好表明と全員一致ルールの違い、4)時間をおいて回答した際の影響について分析した。 分析の結果、1)専門家の説明は、一部の属性に対する支払意志額を引き上げる効果があること、2)全員一致ルールの下では、支払意志の低い人に合わせて、支払意志額を下方修正する人がいること、3)一定期間経過後、ため池管理者と環境保護団体加入者の双方が意見交換に参加した群では、他の群と比較して、一部の属性に対する支払意志額の低下の度合いが小さかったり、一部の属性に対する支払意志額が上昇したりしていることなどが明らかとなった。これらの結果は、生物多様性保全の意義やそのための取り組みについて具体的に説明できる人の存在が重要であること、および、人々は他の人の状況に配慮して自らの協力の度合いを決定することを示唆している。
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