研究概要 |
21年度は、黄砂のグローバル・マネジメントを実施するためのネットワークづくりと情報交換を主として行った。これまで申請者らが中心になって行ってきた陜西省北部での緑化ネットワークによる会議開催、広報、生態文化回復活動の普及などを現地と連絡をとりながら行った。一方日本では、ネットワーク参加拠点である東勝のウランダワにある坂本毅による緑化基地の現況紹介とともに、アラシャンにおけるオイスカ緑化ポイントの富樫智にも新たにプロジェクトに参加していただき、内モンゴルと黄土高原にまたがるネットワークを形成することとなった。さらに、黄土高原および砂漠緑化作物の商品化という点で、これまで砂桃(スナモモ)のバイオ燃料事業をすすめようとしてきた、神木の張応龍と、日本の企業家樋口伸也のネットワークがこれに加わり、日本において新たに「生態文化回復協議会」というネットワークを立ち上げ、ビジネスベースで成り立つ環境回復事業の実践の場を構築する実験を開始した。 これまで、研究活動と市民によるNGO,さらには環境ビジネスによる緑化事業は、必ずしも有機的に連携してきたわけではなかった。本研究はこうした異なるアプローチをつなぐ「場」を創出することにより、「研究」「NPO」「企業」を日中双方でつなぎ、情報や思想を相互に流通させ、より具体的で実行可能な、生態回復プロジェクトを展開するための基礎を構築しつつある。 また、国際ボランティア学会等で報告し、黄砂問題は「社会・経済」的問題であり、「当事者」「外部者」という「境界」は存在しないこと、我々日本に住むものも当事者として解決のための方策を考える必要があること、などを提起した。また現在別途すすめている「社会生態史学」という視点から環境問題を読み解く手法を黄砂研究に導入すべきである、という主張を行い、大きな反響を得た。
|