研究課題/領域番号 |
21310171
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
三成 美保 摂南大学, 法学部, 教授 (60202347)
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研究分担者 |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
山本 秀行 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90230581)
田端 泰子 京都橘大学, 文学部, 教授 (20088016)
森 紀子 帝京大学, 文学部, 教授 (50241154)
山辺 規子 奈良女子大学, 文学部, 教授 (00174772)
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キーワード | ジェンダー / マスキュリニティ / 比較文化 / 比較史 / 公私関係 |
研究概要 |
本年度は、「ジェンダー秩序と「公私関係」」について考察するために、3つの課題を掲げて共同研究に取り組んだ。[1]ジェンダー秩序の比較、[2]「公私関係」の比較、[3]「マスキュリニティ」の比較である。[1]・[2]は、研究課題の根本に関わる内容であるため、今後とも研究を深める予定であるが、本年度の研究から以下の展望を得ることができた。(1)ジェンダー秩序が異なる要因として、歴史的には以下の3点が重要である。(1)支配層男性に期待される能力の差異(武装能力/知的能力)。(2)血統尊重意識の差異(男系血統/王家等の高貴な血統)。(3)セクシュアリティ規範の差異(多様な性をどの程度まで無視/許容/禁圧するか)。たとえば、性関係の多様性を認めない中世ヨーロッパ社会では血統主義は男性に偏らず、高貴な血統の女性は必ずしも公的政治から排除されない。多様な性を禁圧しない近世日本は男系血統主義にたち、武装能力をジェンダー秩序と身分制秩序のもっとも重要な要因となす。(2)「公」の意味内容の相違が「公私関係」を決定する。「公」はさまざまな要素が組み合わさって定義されるが、古代ギリシアのように「公=共同」観念が強いほど「公私関係」のジェンダー・バイアスもまた強まる傾向がある。[3]「マスキュリニティ」の比較については、2009年10月24日(土)に公開シンポジウム「マスキュリニティの比較文化史-日本とアメリカの比較」を実施した。講演は、伊藤公雄(京都大学教授)「日本における男性学研究の展開と現状」、ダン・クワン(アメリカの舞台芸術家)「アジア系アメリカ人の演劇とマスキュリニティ」であった。伊藤報告は、「男性主導社会」たる「近代」の終焉、社会全体を男らしくしようとしたファシズムに見られる「ホモエロティック」の問題を指摘した。また、クワン報告は、アジア系アメリカ人男性が、自己に内面化された白人社会のマスキュリニティ規範によっていかに抑圧されているかを示した。「マスキュリニティ」研究は軍隊や戦争、同性愛に集中しがちであるが、こういったまなざし自体がある種のジェンダー・バイアスをはらんでいることに留意しつつ、次年度は「マスキュリニティ」規範構築の比較を行う予定である。
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