研究課題
最終年度である本年度は、これまで北海道大学の応用倫理研究教育センターをプラットフォームとして開催してきた研究会やワークショップにおいて明らかになった問題を検討し、研究成果を最終報告書に取りまとめた。(1)専門職概念の再定義を進めるにあたり、「公共的世界への関心に支えられた専門職」という概念の適用可能性を検討した。異なる職種の専門職業人がチームとして協同し共通の課題に取り組むことが常態となった今日、公共的価値の実現のために専門職業人が他の専門職業人だけにではなく市民や社会に広く深くコミットすることが、専門職の現代的なあり方であることを示した。(2)専門職の課題の明確化を進めるにあたり、ほとんどの専門職職業人が組織に属する今日において、専門職の役割や機能について古典的な専門職モデルによる説明の可能性と妥当性を検討し、「個の倫理」と「組織の倫理」に齟齬をきたす場合に、古典的なモデルが深刻な挑戦を受けることが明らかになった。科学技術のデュアル・ユース問題を例にとると、研究者の学問的自由や研究そのものの自由と安全とが「個」と「組織」の間でゆらぎ、もはや古典的なモデルでは解決できないことが示された。(3)専門職倫理の構造解明と再構築については、福島第一原子力発電所事故から逆照射的に明らかになった、専門知だけによっては解決できない「トランス・サイエンス」問題に対して専門家がとるべき態度について検討した。平成24年10月に開催した第7回応用倫理国際会議では、シュレーダー=フレチェット博士による全体講演「環境正義の視座による、福島第一原子力発電所事故における被害者の3類型」を端緒として、専門家の役割について批判的検討を行った。これを通して、専門家と市民の望ましい関係として、「パターナリズムモデル」や「対決モデル」ではなく「対話モデル」を早急に構築し実装することの意義と重要性を示した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Journal of Military Ethics
巻: 11:2 ページ: 136-148
社会と倫理(南山大学社会倫理研究所)
巻: 27 ページ: 29-39
International Journal of Applied Phikosophy
巻: 26 ページ: 181-195
哲学年報(北海道哲学会)
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