研究課題/領域番号 |
21320005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関根 清三 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90179341)
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研究分担者 |
三嶋 輝夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (80157479)
出村 和彦 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (30237028)
高橋 雅人 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (90309427)
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キーワード | 哲学と宗教 / 知と信 / 旧約聖書 / 西田幾多郎 / ベッサリオン / アウグスティヌス / ソクラテス / 内村鑑三 |
研究概要 |
各研究者は、前年度までの成果を踏まえ、引き続き、(1)各自の課題を遂行する上で重要と思われる文献解釈の先行研究の再検討、(2)テクスト解釈の妥当性を確保するため、それぞれの担当領域における宗教・倫理思想の固有性、その文化的・地域的負荷の顕在化、といった作業を行った。具体的には、 関根は、大部の編著『アブラハムのイサク献供物語 アケダー・アンソロジー』(キリスト教団出版局)を上梓した。これは、テクスト解釈と研究史を批判的に検討俯瞰したもので、宗教と哲学の対話について、ヘブライズム・キリスト教の典型的な例を纏めることができたと自負している。その際、高橋雅人氏ほか、本科研費の研究ネットワークと関わる共同作業の成果となったことも銘記しておきたい。 三嶋は、東西料教会統一のための交渉におけるベッサリオンの役割について研究を進めるとともに、論敵ゲオルギオス・トラペツンティオスの著作について研究を進めた。 出村は、『アウグスティヌスの「心」の哲学:序説』を完成し、その中で、特にアウグスティヌスに於ける「心」に定位した哲学と宗教的探求の関係を考察した。また、オックスフォードの国際教父学研究集会でアウグスティヌスの「心」の概念の出現と展開について招待講演をした。 高橋は、東方キリスト教会の霊的指導書である『フィロカリア』の一部、『アブラハムのイサク献供物語』の一部、さらに『科学・技術・倫理百科事典』のキリスト教倫理と科学技術に関する項目を翻訳した。また、ソクラテスの神観念について研究を進めた。 各人の作業を相互に批判検討し統合的に考察するため、2月に2日間に亘る研究会を行い、各自研究経過を発表した。この研究会には、ヘレニズムキリスト教の専門家の出村みや子教授(東北学院大学)を招いて、古代アレクサンドリアに定位した哲学と宗教の対話の一端を伺い、これを題材に討議を行って研究を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各担当者は、研究計画初年度より取り組んできた原典テクストの選定と読解作業を順調に遂行し、先行研究の検討を通じて、倫理学的特色に留意しつつ、独自な解釈を提示する一応の見通しを立てるところに漕ぎつけている。その過程で、ヘブライ語やギリシア語の原典の翻訳や注解、研究アンソロジーも刊行した。また、以上の作業の成果の一端は、ほぼ計画通りに著書、論文、学会発表の形で示している。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれの担当領域における我々の解釈の妥当性を確証するために、宗教・倫理思想の固有性、その文化的・地域的負荷の顕在化、といった作業を行った上で、上記作業の有機的統合を図り、研究会による直接的な意見交換、また電子メール等の手段による間接的な情報の交換を通して、研究を推進する。研究会については、地震等の影響も考慮しながら、5月以降、複数回、開催する予定である。
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