研究課題/領域番号 |
21320005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関根 清三 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (90179341)
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研究分担者 |
出村 和彦 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (30237028)
三嶋 輝夫 青山学院大学, 文学部, 教授 (80157479)
高橋 雅人 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (90309427)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宗教 / 哲学 / ヘブライズム / ヘレニズム / キリスト教 |
研究概要 |
本年度は、従来通り各自の研究を行い、また全体としては2013年3月に岡山大学で研究会を開催した。そこでは出村の著書の検討を中心的に行い、各自の研究状況を報告し、皆で討議した。 個々人の研究は以下の通りである。関根にとっては、突発的に東日本大震災が起こり、自分たちの哲学研究の意味を改めて問い直す作業が前年度に続いて1つの重要な課題となった。論文1、講演1、対談1はそうした連関でヘブライズムの宗教と倫理の現代的射程を探る研究となった。それと並行してかねてからの基礎研究も先に進めた。前年に上梓した図書1について、その後の反響を踏まえてアフターケアした講演2,3、、日本の旧約学の回顧と展望を述べた論文1はそうした基礎研究の成果だった。出村は、アウグスティヌスにおけるラテン語の「心」(cor)という概念を軸として、アウグスティヌスの哲学と宗教の関わりについて、国際学会(ソウルおよびローマ)で諸研究者と討論した。また、心臓を表すギリシア語kardia、ヘブライ語leb、中国語の「心」、大和言葉「こころ」の概念の人間学的考察を深め、アウグスティヌスの独自性を再検討した。三嶋は、今年度も引き続きベッサリオンとゲオルギオス・トラペズンティオスの論争について研究を進め、特にその論争の火付け役とも言うべきプレトーンの『アリストテレスとプラトンの相違点について』の内容について検討した。また3月にはヴァティカン図書館において『プラトン批判者論駁』の写本を手に取り、テキスト上の疑問点について検証した。高橋は2012年6月にオリンピアで開催された国際学会に参加し、プラトンにおける経済と自由との関連について発表し、大きな成果を得た。また、哲学研究の意義について若い世代に伝える課題を遂行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヘブライズムとヘレニズム、哲学と宗教の交錯を見据え、それぞれの思想的特色を明らかにするとともに、現代における意義を闡明せんとする本研究において、各自の研究が着実に行われているのみならず、東日本大震災を契機に、哲学研究の意義をより深く検討することが着実に行われているがゆえに、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究期間の最終年度であるので、各自の研究成果を報告する会合を開く。また、研究組織全体の研究成果を何らかの形で発表することも考えている。 研究代表者の関根は『旧約聖書と哲学』において採用した方法をさらに展開しながら、宗教もしくは歴史の書である旧約聖書を哲学的に解釈することの必要性と必然性について、夏のアテネの国際哲学会で講演し、また英語の著作に纏めて年度中に刊行する予定である。三嶋は、今年度も引き続き、ベッサリオン、ゲオルギウス・トラペズンティオス、プレトーン三者の関係について研究を進めるとともに、新たにベッサリオンに近いと思われるEgidio da Viterboの”Ad mentem Platonis”についても研究を行うこととする。出村は、『アウグスティイヌスの「心」の哲学:序説』を増補しつつ、アウグスティヌスの「哲学」(philosophia)と 「宗教」(religio)との対話の焦点にある、ラテン語の「心」(cor)という概念の影響史をまとめる。高橋はプラトンの「神話」の語り方、および対話篇における役割について、中期対話篇と後期対話篇の比較検討を通じて考察する。
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