本年度は8月に新疆へ出張し、(資)文化財復元センターの協力のもとトゥルファンおよびスバシで可視光ならびに赤外線での撮影を行った。トゥルファン地区では、現地の文物を管理するトゥルファン地区文物局との交渉の結果、本年度はトヨク第20窟の撮影を行うこととなった(当初予定していたトヨク第42窟の撮影は、石窟の状態が危険だとのことで、残念ながら今回は実施できなかった)。またスバシではクチャ県文物局の了解のもと、スバシ第3窟と第5窟の可視光・赤外線撮影を行った。これら撮影分の画像に関しては、帰国後同センターによる復元作業を行い、これにより、大部分のものに関して不明瞭な壁画をよりはっきりとしたかたちで観察することが可能となった。特に、トヨク第20窟に関しては、従来全く観察不能であった画像の一つを、一部ではあるが観察することが可能になった。これらの復元結果の発表に関しては、今後中国側関係当局との協議の上準備を進める予定である。 9月にサンクト・ペテルブルクへ出張し、国立エルミタージュ美術館に所蔵されるトゥルファン・敦煌文物の調査および可視光撮影を行ったほか、エルミタージュ美術館所蔵の観経変相の成立事情と内容の解釈に関する招待講演を行った。 さらに3月にはデリーに出張し、鳩摩羅什の禅観思想に関する招待講演を行った。その後デリー国立博物館に所蔵される中央アジア文物(スタイン・コレクション)の調査ならびに可視光撮影を行い、また最近の私の観経変相研究に関する報告を行った。
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