研究課題
平成24年度では、平成25年度「科学研究費助成事業(科学研究費補助金)」(研究成果促進費)の交付申請に向けて「カーレル・ファン・マンデル「北方画家列伝」註解」の完成に向けて訳文の完成とブラシュアップ、訳註の作成と研究論文の作成に向けて時間を集中的にかけることとなった。マンデルは『絵画の書』において、inventie(着想/創意)、teyckenconst(線描芸術)、wel verwen(彩色)という鍵となる概念を用いて、15、16世紀ネーデルラント絵画史を記述したことが浮き彫りになった。マンデルは、自律的に『絵画の書』を執筆したのではなく、とくにヴァザーリの『芸術家列伝』に対抗する形で、ヴェネツィアの絵画論、とりわけロドヴィコ・ドルチェの『アレティーノ』で論じられている色彩論を援用した。つまり、マンデルのteckenconstは、ヴァザーリのdesegnoを強く意識しながらも、マンデルは本質と属性の関係を逆転した。ヴェネツィアにおける色彩の優位という考えとディゼーニョを一体化させることで、絵画とは、素描と色彩が不即不離の形で結びついたものであり、絵画として人の目をひきつけるには、属性として軽視された色彩こそが重要なファクターであるという絵画論を打ち立てた。この絵画とは自律的な存在ではなく、鑑賞者が存在を重視する絵画観である。つまりよき理解者、コレクターが存在することで、絵画の意味はその「あいだ」に生まれるという絵画観の誕生を表している。とくに、研究分担者の深谷訓子は、「人名で読むカーレル・ファン・マンデル『絵画の書』、及び用語解説」という研究を行い、そのなかでマンデルの挙げている画家たちが一定のレトリックによって配列されていることをあきらかにした。また廣川秋は暁生は「北方画家列伝」に言及された作品の内、現存作品の所在を丹念に調べる研究を行い大きな成果を上げている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Art History(Bijyutusigaku)
巻: 34 ページ: 1-12
『男と女の文化史』
巻: 1 ページ: 136-207
Rembrandt: The Quest for Chiaroscuro
巻: 1 ページ: 107-118
巻: 1 ページ: 129-144
『尾道大学芸術文化学部紀要』
巻: 11 ページ: 29-39