研究課題/領域番号 |
21320028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 俊春 京都大学, 文学研究科, 教授 (60198223)
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研究分担者 |
根立 研介 京都大学, 文学研究科, 教授 (10303794)
平川 佳世 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10340762)
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キーワード | 美術史 / 芸術諸学 / 工房 / 共同制作 / 競争 / アカデミー / 美術教育 / 徒弟修業 |
研究概要 |
芸術家工房が若い徒弟たちの教育において果たした役割を探るとともに、それが、近世初期に成立した美術アカデミーにおける美術教育と、どのような共通性を有し、如何なる点で相違していたのかについて考察するという目的で、劔持を中心として、パドヴァのスクアルチョーネ工房に関する研究を行い、さらに、深谷を中心に、ユトレヒトの素描アカデミーの実態に関する研究を行った。 スクアルチョーネについては、彼と画家ウグッチョーネとの間で、後者の息子フランチェスコの教育に関して交わされた契約書が残っている。そこには、スクアルチョーネが、素描の基礎や構図法を教え、学習のための手本を提供し、作品の添削指導を行うことが明記されており、親方が、授業料を受け取り徒弟に画業を教えていた工房のシステムを窺い知ることができる。また、スクアルチョーネ工房には、アンドレア・マンテーニャやマルコ・ゾッポなどが活動していたことが知られている。これらの優れた画家たちがこの工房に引きつけられた理由の一つは、種々の作品に基づく素描や古代彫刻などが収集されていたからではないかと推測される。こうした芸術家工房における視覚資料の収集が有していた意味やその公開性の度合いに関する研究を進めることの重要性が明らかとなった。 一方、美術アカデミーでは、複数の画家たちが画家を志す若者たちを指導したが、その初期の形態を明らかにするために、ユトレヒトの素描アカデミーに関する資料を検討した。また、興味深いことに、17世紀には、良き美術教育を普及させるという理想から発展して、誰もが学べる素描学習用の教材と銘打った、数多くの図版が付された素描の本が刊行されるようになった。これらの本に掲載された版画の手本と工房における伝統的な教育システムとの関連について、さらなる研究を進めることとなった。
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