研究課題/領域番号 |
21320038
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
根岸 一美 同志社大学, 文学部, 教授 (80097956)
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研究分担者 |
渡辺 裕 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80167163)
武石 みどり 東京音楽大学, 音楽学部, 教授 (70192630)
桑原 和美 就実大学, 教育学部, 教授 (60341137)
井手口 彰典 鹿児島国際大学, 福祉社会学部, 講師 (00469412)
坂本 秀子 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (90277682)
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キーワード | 楳茂都陸平 / 原田潤 / 宝塚歌劇 / 新舞踊 / 『春から秋へ』 / 舞踊譜 / 復元上演 |
研究概要 |
本研究は、大正時代の宝塚少女歌劇において試みられた舞踊譜とそれによる舞踊実践を考察することにより、日本の洋楽受容史、舞踊史、演劇史における独自性、先駆性を再検討することを目的としている。最終年度となった本年度においては、この目的のために採り上げた『春から秋へ』の復元上演の準備を進め、平成24年2月18日にその成果を公にすることができた。研究の主たる内容は、本作品の舞踊譜の解釈を行い、音楽スコアとの照合によって実際の音楽と舞台上の振付を検証することにあったが、あわせて実施したシンポジウムでは、外部より招聘したパネリストたちより、『春から秋へ』上演の音楽文化的コンテクストについて見解が示され、1)この作品が当時流行した「お伽歌劇」のジャンルに近い位置を占めながらも、図抜けて高度な洗練された作品に仕上がっていること、また、2)その背後にある家庭の「生活改善」イデオロギーを具現していることなども明らかにされた。この復元上演とシンポジウムに当たっては、全12頁のパンフレットを作成し、配布した。多くの来客を得て3時間余となった催し全体はDVDに記録したので、今後の考究のための材料を提供できたと思う。 以上のプロジェクトと共に、原田潤が宝塚少女歌劇のために作曲したその他の作品についての研究も推し進め、その結果、1)『春から秋へ』以外は台詞と歌唱を伴う歌劇であったこと、2)『春から秋へ』の音楽が不協和音や多声書法を駆使しているのに対し、他の多くの上演作品は日本的な舞台設定となっているため、音楽も日本風旋律を中心とした単純な構成と楽器法によるものが大半であることも明らかになった。また、舞踊史の面からは、1)楳茂都陸平の舞踊譜が初代扇性以来の楳茂都流記譜法を基本としていること、2)『春から秋へ』が日本舞踊、バレエ・西洋舞踊、舞楽などの異なる形式を取り入れた、斬新な作品であったことも改めて確認された。
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