研究概要 |
院政期の宗教施策に関する寺院文芸を領域複合的に捉え直し解明することを目的として、鳥羽院政期から後鳥羽院政期の実態を探求する調査・研究を開始した。 南都寺院および真言系寺院関連の儀礼・法会・唱導に関わる資料を中心に調査を遂行して、資料の収集、書誌データの作成等の基礎的作業を進めた。調査は、研究計画段階から研究分担者が中心となって継続的に進めている寺院聖教調査と連動させ、相乗的効果が得られる工夫を施している。 南都関連寺院に関する研究においては、説話文学会大会(2009年6月21日於奈良女子大学)において解脱房貞慶の唱導に関する報告を行い、興福寺における戒律に関する僧侶の系譜と鳥羽院政期における問題および後鳥羽院政期に至る展開について、名古屋大学比較人文学先端研究特別演習「中世宗教テクスト研究の可能性」(2009年12月25日於名古屋大学)において報告した。さらに南都の文学を通時的かつ領域横断的に再評価する企画として、『文学』の特集「南都の文学」(2010年1月岩波書店刊)に携わり、その成果を誌上に発表した。 領域複合的解明を員指して、ふたつの国際研究集会を実施した。一つめは、「院政期から鎌倉期の宗教施策に関する研究-南都仏画を視座として-」(2010年2月11日於筑波大学)である。本研究の海外協力者であるボストン美術館アン・モース氏と奈良国立博物館谷口耕生氏を講師として招き、院政期の南都仏画の視点から院政期の宗教施策について考えた。二つめは、「Rethinking the Boundaries Between Religion and Culture in Premodern Japan : Religious Practitioners, Aristocrats, and the Transformation of Jananese Literatures」(2010年3月18~19日於イリノイ大学)である。本研究の海外協力者であるイリノイ大学ブライアン・ルパート氏との共同企画で、日本側からは本研究のメンバー5名が研究報告を行った。
|