本研究は、江戸時代前期における作家の書写活動について、浅井了意・居初つなという二人を中心として調査・研究し、その活動の実態を明らかにした上で、その作家活動を問い直そうとするものである。日本古典文学の作家は、特に江戸時代中期以前の人物については、ほとんど不明といってよい。井原西鶴以前の散文の作家は、作品に署名しないという事情もあり、誰が作品を創作したのかも、さらには、それを誰が写したのかも、不明であることが多い。そういった中で、最大の仮名草子作家である浅井了意が、多くの写本や奈良絵本・絵巻を書写していたことが明らかになった。また、一世代後の女流往来物作家である居初つなも、同じように、多くの写本や奈良絵本・絵巻を書写していたことが明らかになった。この二人の書写本は、現段階でも次々と現れているのが現状である。まずは、それらの書写本をデジタル化し、整理した上で、二人の書写活動をまとめ、筆跡を詳細に調べることにより、二人がいかにして作家になりえたかを考察した。 平成22年度においては、資料図書をそろえた上で、各地に原資料を求めて調査に赴いた。また、研究代表者と連携研究者の計4人で、夏休みにイギリスのオックスフォード大学図書館に調査に赴いた。
|