研究課題
江戸時代、活発な商業活動によって財力を蓄えた豪商達が、実業の傍ら風雅・余暇に身を置いて文化活動に力を注ぎ、伝統文化の継承と発展を支えた。三重県津市の石水博物館は、津を拠点として江戸・京都に店を持つ太物商であった川喜田家、加えて松坂を拠点とした長井家の資料を一括して継承管理している。この資料中、文芸関係資料の調査を四年間に渡って行い、伝統文化の発展と継承に寄与した力が如何に大きかったかをかなり明らかにできたと思う。川喜田家は、九代久太夫以降歴代の当主が和歌や俳諧、国学を嗜み、武者小路実蔭らの堂上歌人や北村季吟らの和学者、本居宣長らの国学者をはじめ、曲亭馬琴や歌川国貞などの東西の文芸・芸術家と深い親交を持って、文芸活動に力を注いだ。歴代の当主は、それぞれ関心を持った分野を中心に研鑽を積み、確かな力量を身につけて、自らの作品や著作を残すとともに、親交を持った文化の担い手たちの作品や書簡等の貴重な資料を収集した。加えて川喜田家は、収集した資料を決して放棄せず、全てを維持管理して、現代まで伝えてきた。今回の調査で、馬琴の自作批評書『著作堂旧作略自評摘要』が発見されたのをはじめ、近世の和学、和歌、小説、狂歌、雑俳などの分野における新資料、また、能狂言では謡本、歌舞伎、浄瑠璃、絡繰りの番付類や芝居絵などに上演史や上演実態をより明らかにできる新出の資料も発見できた。加えて、所蔵されていた4点の座鋪絡繰りの解体調査によって、江戸時代の絡繰り人形の技術の実際も明らかにできた。これらを踏まえて「公開シンポジウム 伊勢商人川喜田家代々の文芸活動」を開催してさらなる検討を加え、本研究における成果報告書を纏めて刊行した。この報告書には石水博物館蔵歌舞伎浄瑠璃番付目録を作成して添付した。猶、馬琴の『著作堂旧作略自評摘要』については、馬琴研究への影響の大きさを鑑み、影印に翻刻と注を付して公刊した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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