研究課題
本年度は、第1次大戦後から30年代初めまでの時代を対象として、6月、7月、12月に研究会を開き研究成果を持ち寄るとともに、二つの公開シンポジウムを企画実施した。一つは、10月9日に長木誠司とゴチェフスキ・ヘルマンが中心になり穴山朝子(御茶の水大学)と韓国から李京粉(ソウル大学)の両氏を招き「プロパガンダと音楽」のテーマのもとに開催した。政治的に左右両派が激しく対立抗争を繰り広げた20年代の大衆文化とくに音楽、オペラ、映画を対象にした刺激に富む発表がなされた。議論も活発に交わされ、大衆を煽動・動員するための表現技術的側面を明らかにすることができた。もう一つは、3月12日13日にドイツからBernd Stiegler(コンスタンツ大学)とKai van Eikels(ベルリン大学)の両氏を招き、代表者と分担者全員参加の下に国際シンポジウム「陶酔と制御」を企画したが、11日の震災のために12日のみ公開の形を取り、13日は内輪での集まりにとどめざるをえなかった。しかしながら事前に発表原稿が回覧されていたので、短い時間ではあったが、事前の準備会を含めて有益な意見交換ができた。とくに、群衆や集団の描かれ方が技術および機械の表象と深く関連している様子を、陶酔と制御という二つの観点を導入することによって鮮やかに把握することが可能になった。また、技術の進歩による劇場の設計と建造が集団的な陶酔の演出に果たした役割を具体例によって示し得たこと、および集団・群衆の一体感とは対照的に、あるいはその裏面として、個人の人格の分裂や狂気の問題が時代の文学・芸術に潜んでいた様子も取り出し得たことは、大きな成果であった。
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言語・情報・テクスト
巻: 17 ページ: 1-8
レコード芸術
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