研究課題/領域番号 |
21320063
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田口 紀子 京都大学, 文学研究科, 教授 (60201604)
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研究分担者 |
吉川 一義 京都大学, 文学研究科, 教授 (30119870)
増田 真 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10238909)
永盛 克也 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10324716)
杉本 淑彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (30179163)
多賀 茂 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (70236371)
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キーワード | フランス文学 / 歴史叙述 / リアリズム / フィクション |
研究概要 |
具体的行事として行ったのは以下の通りである。 公開講演会として2011年7月20日に研究分担者である多賀茂氏による「フーコーにおける歴史記述」(於仏文研究室)の講演と討議を行った。現代思想についての議論を行う機会はこれまでなかったので、活発な意見交換が行われた。 11月18日(金)から20日(日)までの3日間、関西日仏学館稲畑ホールを会場に、これまでの本科研研究活動の成果を公にするために、国内外から招いた13人の専門家と合同で国際シンポジウム「フィクションはどのようにして歴史を作るのか-借用・交換・交差Comment la fiction fait histoire-Emprunts, echanges, croisements」を開催した。(研究分担者の発表内容については13.研究発表の欄を参照のこと。)国内外から50名を超す参加者を得て、報告者間にとどまらず、各世紀のフランス文学、思想、歴史、精神分析といった幅広い分野の専門家からも貴重な指摘や意見が寄せられ、改めて本テーマの射程の広さが確認された。本研究が総括の最終年度を迎える前に、それぞれの分担者の成果を公にし、必要な部分の強化を行い、場合によっては軌道修正を考えるための機会となったことも、本年度の大きな成果といえる。たとば、代表者の田口が担当する文体論・ジャンル論を例にとれば、1820年代のロマン主義の流れのもとで、「歴史」というテーマを中心に「小説」「演劇」「歴史記述」という各ジャンルが非常に接近した。その事実を、歴史小説における事件のらち外の語り手による分析的語りの採用、目の前で繰り広げられるように事件を再現する演劇的な小説文体、上演されることを前提としない「歴史的場面scenes historiques」というジャンルが革命劇以降発生し、3人称の語りにつながったことなど、相互浸透的運動として実証できたのは大きな成果であった。しかしこの結節点から諸ジャンルがいかに独自の形式と目的とを発展させていったのかをさらに調査、分析し、特に「歴史」の文体がどのようにその真実性を担保しようとしたのかを検証する必要があるだろう。 シンポジウム以降は、各自がシンポジウムでの新たな問題提起や、それまで十分に検討していなかった領域の掘り下げを行い、最終年の総括の準備に取りかかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
17世紀から20世紀の文学作品ならびに文体論・ジャンル論について、それぞれの研究分担者が調査、分析を進め、その成果を11月に開催した国際シンポジウムで報告し、国内外からの招待報告者を交えて討論することができた。また全国から多数のフランス文学の専門家の参加も得られ、フロアーからの質問やそれに基づく討議も活発に行われた。同時にm、これまで世紀別、作家別の研究が通常であったフランス文学の領域で、専門を異にする研究者が「文学と歴史の物語性」を共通の問題とし実りある議論が実現したことで、このテーマの普遍的有効性を広く示すことができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年であり、本年度の国際シンポジウムの成果の刊行を準備しながら、さらに個々の分野での調査・分析を進める。併せてこれまであまり研究が進んでいないテーマに関しては、国内外の専門家を招き、公開講演会を開催することで、さらなる充実を図りたい。すでに5月29日にはコレージュ・ド・フランス教授アントワーヌ・コンパニョン氏による「ジャーナリスト詩人ボードレール」という講演会が予定されていて、ジャーナリスムと文学を巡る19世紀のモデルニテの問題を議論する絶好の機会となると考えている。
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