研究課題/領域番号 |
21320064
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田上 竜也 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (90327669)
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研究分担者 |
牛場 暁夫 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (70118917)
大出 敦 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (90365461)
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キーワード | 仏文学 / ヴァレリー / 草稿研究 / コロニラ |
研究概要 |
当該年度の主な成果は以下の通りである。 1、平成21年度に慶應義塾大学図書館の協力を得て作成した、ポール・ヴァレリー書簡詩『コロニラ』の高精度デジタル画像記録データを基に、草稿現物と突き合わせながら、田上、牛場、大出の3名で校訂作業を実施した。具体的には草稿の解読、手紙の日付確認、物的状態(形、色、大きさ、紙質等)の記録であるが、こうした作業は今後も継続され、以下に記す翻訳の注に生かす予定である。 2、田上、大出に研究協力者の立仙順朗、田中淳一(慶應義塾大学名誉教授)を加えた3名で翻訳作業を行い、『コロニラ』全130篇のうち約100篇について訳稿を作成した。次年度においては翻訳完成をめざす。 3、田上がパリのフランス国立図書館で資料調査を行い、『コロニラ』と密接な関係を有する『コロナ』関連詩篇草稿や、詩以外のジャン・ヴォワリエ夫人宛て書簡、およびそれらと同時代の『わがファウスト』や、ヴァレリーがコレージュ・ド・フランスで行った「詩学講義」関連草稿について解読、筆写作業を進めた。とりわけ「詩学講義」に関する調査成果は、筑摩書房から公刊された『ヴァレリー集成第III巻・詩学の探究』(森本淳生氏との共著、共編)中の「詩学」の部分において発表した。「詩学講義」に関しては、これまでごく一部の内容しか紹介されておらず、その全貌を明らかにすることは、日本のみならず世界的にも初の試みであり、大きな学問的意義を持つ。 4、『コロニラ』の中心的テーマである「エロス」と「身体」の問題を、ヴァレリーのみならず同時代のフランス作家たちとの関連で考究するため、研究メンバーの間で数回研究会を開催し、意見交換を行った。特に研究分担者の牛場はプルースト、大出はクローデル研究において大きな成果を収めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『コロニラ』が本来公刊を目的としたものではなく、愛人ジャン・ヴォワリエに宛てて書かれた私信詩であるため、解読に難航する箇所が少なからずある。しかしながら4年間で翻訳、校訂版完成にいたるという最終目的へは着実に歩を進めており、その過程において、「慶應義塾貴重書展カタログ」、『三田文学』ヴァレリー特集、『ヴァレリー集成第III巻』などの成果をすでに世に出していることについては大いに評価されてしかるべきものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
慶應義塾大学図書館の協力を得て作成し、DVDの形で購入した『コロニラ』の高精度デジタル画像記録データは、高精度とはいえ、それでも微細な部分については解像度においてまだ不足する箇所がある。 そのため図書館が保管するオリジナル画像から、特に読み取りにくい箇所についてはさらに高精度の画像を入手し、校訂、翻訳を進める必要がある。 そのうえで次年度の大きな目標は校訂・翻訳を完成することである。
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