人文科学研究所における高田の主宰する研究班、およびそれとは連携しつつ独立して定期開催している俄蔵敦煌文献研読会の例会を通じて、ロシア所蔵の敦煌吐魯番文献に対して個別的検討を加えると共に、既刊目録の補遺をおこなうべく各種文献情報の収集を行った。また研究代表者及び研究分担者、研究協力者は2009年9月にサンクト・ペテルブルグで開催された敦煌学国際会議「Dunhuang Studies : prospects and problems for the coming second century of research(敦煌学:第二個百年研究視角与問題)」に出席し、研究成果を発表し、あわせてロシア科学アカデミー東洋写本研究所に於いて敦煌写本の原件につき調査を行った。研究の最前線に触れ、研究の質的向上に役立つことは言うまでもなく、国際的に研究情報を交換するうえで大きな意義があった。高田はまた2010年3月にサンクト・ペテルブルグの東洋写本研究所を訪問して、同所との緊密な連携を確認し、2010年9月に本研究班主催の敦煌写本ワークショップを同地で開催することを取り決めた。このワークショップにも分担者、協力者全員、さらに国内外から若干の研究者が参加することになっており、敦煌学の国際連携の更なる発展への寄与が期待される。代表者及び分担者の研究成果の一部は、2010年3月刊行の『敦煌写本研究年報』第4号に掲載され、ネット上でも公開されている。成果の速報性の点で、この『年報』の定期刊行はきわめて有用であると信じる。
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