H24年度は、連携研究者筧文生とともに『四庫全書総目提要』(以下、『四庫提要』または『提要』と略称)の総集の部に著録される165種の総集のうち、宋人が編纂し、かつ宋代の作品を収録する総集34種を選び、その『提要』に訓読や現代語訳のほか伝記・版本・文学史上の評価などを含む詳細な注釈を施し、研究成果として出版する準備を行った。 そのうち注釈作業については、『四庫提要』の先行研究である胡玉縉『四庫全書総目提要補正』・余嘉錫『四庫提要辨證』・欒貴明『四庫輯本別集拾遺』・李裕民『四庫提要訂誤』・崔富章『四庫提要補正』などを参照しつつ、本研究で明らかになった新しい知見を加えた。また、版本調査については、近年、中国で出版された祝尚書『宋人総集敍録』中の、実際の版本を確認せず執筆されたとおぼしき箇所を中心に、その誤謬を訂正した。そのため、国内では静嘉堂文庫や内閣文庫、国外では南京図書館、上海図書館、復旦大学図書館古関閲覧室への調査に赴き再調査を行った。 さらにこうした研究の成果を、『四庫全書宋代総集研究』(共著者:筧文生 汲古書院 2013年)として上梓した。これはH24年度科研費研究成果公開促進費(学術図書)の補助金による出版である。この出版によって、研究代表者がかつて公刊した『四庫提要北宋五十家研究』(汲古書院 2000年)と『四庫提要南宋五十家研究』(汲古書院 2006年)とをあわせて、宋代文学基礎研究三部作の最終章が完成したことになる。 また、南宋の江湖詩派にかかわる総集の文学史的意義については、この分野の第一人者である香港バプティスト大学の張宏生教授を日本に招聘して共同研究を進め、12月に公開研究会を開催した。
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