研究概要 |
本研究は日本語の地域方言に見られる音調の変化を捉えることを目的とする。そのため,音調句のディフレージング(dephrasing,複数のアクセント句がひとつの音調の単位として統合すること)またはダウンステップ(downstep,後続のアクセント句のピッチピークが目立たなくなること)に見られる韻律的従属の変異に着目し,音調の生成に強く開与する語アクセント体系が対照的に異なる北海道,福岡,鹿児島の3つの地域方言を対象に,音調面の言語変化のあり方を言語的要因と社会的要因の両面から社会言語学的に検討することを目的とした。最終年の23年度は,(1)調査の継続,(2)言語的要因といくつかの社会的要因の関連を統計的に分析,(3)Methods14(国際方言学会,カナダ西オンタリオ大学)での発表,(4)JLVC(国立国語研究所)での発表を行った。 (1)については,昨年度中に本研究が目的とする話者数のデータを集めることができなかったので,必要な人数を満たすまで調査を行い,最終的に各地区で若年層20名,高年層10名(東京のみ若年層19名)の系119名のデータを集めた。(2)については,現在までに約半数の67名のデータについて処理が終わっている。データは音調の変異が見られる「ピッチの谷」を従属変数に,その他言語的,社会的要因を独立変数に設定して分散分析,回帰分析等により統計的手法で検討した。その結果,札幌,福岡では,ジェンダー差が見られること,また若い女性のピッチの谷は東京の若年層とほぼ同じであることがわかった。札幌では世代差も見られた。鹿児島はジェンダー差が見られるが,東京などと異なり,女性のほうがピッチの谷が大きいという結果になった。なぜこのような結果になったかは今後改めて考察する必要がある。(3),(4)ではこのような成果を発表した。
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