研究課題
発話意図理解の発達が重複しつつも異なると考えられる4種類の神経機能の発達に依存していると仮定し、定型発達児や、自閉症、学習障害、注意欠陥/多動性障害、聴覚障害を持つ小学生を対象に音声から発話意図を理解する能力を調べた。4種類の神経機能系は、1)情動音声処理系、2)ミラーニューロン系、3)心の理論系、4)言語推論系であり、1~4の順に発達・成熟が起こると仮定した。言語的意味と一致する発話意図を持つ音声表現や矛盾する音声表現に対する発話意図理解機能を単文課題で、文脈と矛盾する音声表現や比喩表現に対する発話意図理解機能を物語課題で検査した。両課題の正答率を解析するとともに近赤外分光法を用いて脳機能の発達過程を調べた。その結果、定型発達児では単文課題の一致表現、矛盾表現、物語課題の比喩表現、皮肉表現の順に正答率が有意に低下した。文脈情報の統合が必要な物語課題の方が短文課題より成績が低下した。言語的意味と発話意図とが矛盾する単文音声表現に対する自閉症児の正答率は定型発達対象群に比べて有意に低かった。注意欠陥/多動性障害群は対象群と有意差が無かった。重度聴覚障害群は自閉症群と類似の傾向を示した。近赤外分光法による脳機能測定の結果、小学1年生では一致表現に比べて矛盾表現で、右背内側前頭前野の活動が有意に増大し、小学4年生では左下前頭回で有意な増大が観測された。これらの結果から、4種類の神経機能系のうち心の理論や言語推論機能は幼児期から小学生前期にかけて発達し話者の意図理解機能を豊かにしていくことが示唆された。
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