研究概要 |
本研究最終年度であるH23年度は、次のような成果をあげることができた。 第二言語獲においても構造依存性が機能し、日本人英語学習者が、適切な教授(トレーニング)で、教授以上の知識が獲得することが可能であることを、fMRIを用いて示すことに成功した論文を出版した。この結果は,外国語環境でも母語で機能する生物学的制約が依然として働いていることを脳科学から示唆した。すなわち,人間言語の中心的原理(構造依存性)に関しては,年齢効果がなく,この意味において,母語と第二言語の言語処理は根本的には異ならないことになる。それに対して、冠詞は第二言語獲得で困難を伴う領域である。冠詞選択(定性、特定性、総称性)と冠詞の知覚に関する実験から、冠詞の知覚の方は教授が容易であるが、冠詞選択は明示的な教授(否定証拠を含む)にもかかわらず教授効果が上がらず、学習文法から学んだ過度に一般化された知識が宣言的知識となっており冠詞獲得の弊害になる可能性を示唆した。研究成果は、Universal Grammar and Classroom Instraction(出版予定)に掲載予定である。また、国内の英語学習者向けにも、昨年度のワークショップに基づいた書籍を出版予定である。時制獲得については、Yusa(2008)で扱った"He is often play tennis"のようなBe動詞の過剰生成と、三人称単数形-sの問題を扱かい、三人称単数sの獲得を促す教授資料を作成した。また、冠詞、時制の第二言語獲得の項目を含むテキストを執筆し、海外から出版予定である。さらに、研究課題の成果を社会に還元する目的で、公開ワークショップ「日本人英語使用者の時制習得の問題点」を開催し、約80名の参加者があった。研究課題に関する、脳機能イメージング、文処理、第二言語獲得、音韻論関連の論文を執筆し、学会発表を行った。
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