研究課題/領域番号 |
21320079
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
遠藤 喜雄 神田外語大学, 言語科学研究科, 教授 (50203675)
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研究分担者 |
長谷川 信子 神田外語大学, 言語科学研究科, 教授 (20208490)
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キーワード | カートグラフィー / 統語論 / 談話 / 意味 / 語用理論 / イントネーション / 話し手 / 聞き手 |
研究概要 |
(1) 内容/目的 本研究は、世界中の言語に適応可能な文の構造を地図(cartography)のような正確さで記述することを目標にしている。このプロジェクトは、現在ヨーロッパを中心に進行中である。 本研究の内容は、次のようにまとめることができる。日本における日本語学や英語学の研究者は、理系の学問分野とは異なり、独自の体系で議論をされることが多い。そのため、優れた日本における研究が、海外では理解されないという残念な問題が見受けられる。この問題を解決するために、本研究では、日本の研究者の優れた研究を、国際的な学会でも理解可能なように洗練し、国際レベルまで引き上げることを目指した。そして、その成果を国際会議で発表し、そこでの結果を日本の学会やワークショップにフィードバックし、議論を重ねた。これにより、日本における言語研究を活性した。 (2) 意義/実施状況 本研究の初年度に当たる平成21年度には、談話を主なトピックとして取り上げた。まず、本研究のプロジェクトに関係する海外の研究者を招聘し、日本における優れた研究者とワークショップやシンポジアムで議論をした。その際、日本の研究者には、事前に海外の研究者に論文を送り、コメントをもらい、そのコメントを踏まえて、研究発表を行ってもらった。その際、英語に不慣れな日本語学の研究者のために、遠藤が仲介役を務め、発表内容を英語にして、海外の研究者に送り、そのコメントを日本語にして日本語学の研究者に伝えるという配慮をした。これにより、ワークショップやシンポジアムにおいて、効率的でかみ合った議論を展開することが可能となった。 (3) 重要性/成果 現在は、ヨーロッパを中心に本研究プロジェクトが大きなうねりをなして動いている最中である。例えば、今回招聘したL. Haegemanをチームリーダーとするプロジェクトでは、ベルギー政府から年間2億円の援助を得て文の構造の地図を作成する作業が進行中である。この絶好の機会を逃すことなく、日本における日本語学/英語学の優れた成果を洗練して、広く世界に体系的に広めることは、非常に重要である。 具体的には、まず、日本語学における副詞節の研究成果を洗練し、遠藤が2009年8月にハンガリーの国際会議で発表した。この成果は、日本のワークショップに持ち帰り議論がなされた。この内容は、近く海外の出版社から出版される予定である。日本語学の一般研究者のためには、『日本語(明治書院)』(4月号)で、プロジェクトの内容と日本語の主題表現の研究成果を紹介した。また、英語学の研究者のためは、『言語研究(日本言語学会)』(136号)で、プロジェクトの内容と、具体的な議論を、英語の付加疑問文を例に取り上げ議論した。広く英語に携わる研究者のためには、日本英文学会で研究発表を行った。その際、そのプロジェクトの全容と、このプロジェクトに馴染みのないものでもわかりやすい副詞の配列についての研究成果をProceedingsに掲載した。これらの作業により、言語学を専門とする者ばかりでなく、言葉に興味を持つ一般の人々を対象に、研究成果を社会に還元した。 さらに、日本国内で行われたワークショップ、シンポジアム、研究会の成果は、報告書にまとめあげ、一般に入手可能にした。
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