研究課題/領域番号 |
21320083
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
中谷 健太郎 甲南大学, 文学部, 教授 (80388751)
|
研究分担者 |
前田 多章 甲南大学, 知能情報学部, 准教授 (90319830)
小野 創 近畿大学, 理工学部, 講師 (90510561)
|
キーワード | 心理言語学 / 文理解 / 日本語学 / 文処理における距離の効果 / 否定対極表現 / 作業記憶 / 疑問文の処理 / 文法依存関係 |
研究概要 |
本研究課題は、母語話者による日本語の漸増的文処理(文が終わるのを待たず入力をどんどん処理していくこと)において、作業記憶への負荷となる条件を行動実験及び電気生理学的実験により検証することにより、文理解のメカニズムの解明を目指すものである。2010年度は主として二つの研究を行った。(1)脳波計を用い、否定対極表現「シカ…ナイ」を含む構文において、「シカ」の出現から「ナイ」の出現までに被験者の脳波に随伴陰性変動(CNV)が観察できるかを検査した。CNVはターゲットに対する準備電位である。結果として、CNVが測定されたが、他の文型に比べ有意な差が見出せなかったことから能動的注意条件におけるCNV測定実験を準備している。(2)前年度の成果として、自己制御読み実験において、疑問名詞句「誰が」に対応する疑問終助詞「か」の処理が距離要因の影響下にあることが発見されたが、Miyamoto & Takahashi(2002)などの先行研究で報告されているタイプ不一致の効果が逆方向に観察されたことが問題となった。これは、疑問助詞「か」の処理負荷が距離要因により増大し、補文標識「と」のタイプ不一致による負荷をはるかに超えてしまったため起こったのではないかという仮説が立てられた。「か/と」の処理負荷は「か/と」それぞれの処理負荷の差異として計測されるので、前者の負荷を軽減すれば後者の効果が顕在化すると予測される。そこで、M&Tらの材料に近い、よりシンプルな実験材料をもって自己制御読み実験を行ったところ、先行研究と同様のタイプ不一致効果が有意に観察できた。よって、「か/と」の処理で先行研究において観察されたタイプ不一致効果は、実際にはタイプ不一致効果と「か」処理負荷の差異であるという仮説が支持された。
|