研究概要 |
本研究は、「焦点」とスコープに関わる言語現象を取り上げ,形式化の整った統語論・意味論・音韻論の方法で理論的に分析するとともに,音声実験や言語コーパス調査などによって理論的考察を実証することを目的とする。 【焦点と省略現象】(A) WH 疑問文に対する短い答えは島の制約から自由であるのに対し、(B) 対比を含む「はぎ取り」構文から派生すると考えられる短い返答は島の制約が強く働く現象について前年度からの考察をさらに進め、(A) のタイプの短い答えは削除に先立って移動操作が起こるのではなく、「その位置で」削除が起こり (delete in-situ), LF で移動が起こるのに対し、(B) のタイプでは削除に先立って焦点投射への移動が起こる旨の分析を考え、前年度までの (A) のタイプで「かきまぜ」が関与すると考えていた分析方法を改めて新たな分析の方向を追求した。【焦点とイントネーション】疑問文の解釈とイントネーションとの関連性について東京方言と佐賀方言との対比についての分析を進め、西垣内・日高 (2013) として発表した。【視点投射と再帰表現】本研究のテーマのひとつである多重投射について、特に視点に関わるものについて考察を進め、日本語の再帰表現の解釈が有意識条件に従う場合とそうでない場合について異なったタイプの視点投射が関与する旨の分析を発展させ、エンパシーや阻止効果との関わりについて分析を展開し、中国語などの言語での妥当性を検討した。【日本語条件文の「理解過程」】情報の既定性がどのような影響を及ぼしているかという問題について、Wason 選択課題の実験手法を用いた検証を行った。【日本語のアスペクトに関する修飾語】単純動詞に語彙概念構造に準拠した複合的な意味表示を与えることで、修飾語のスコープを含む解釈の可能性が予測できることを示した。
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