研究課題/領域番号 |
21320112
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中尾 知代 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (40207717)
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研究分担者 |
森 茂起 甲南大学, 人間科学研究所・文学部, 所長・文学部長 (00174368)
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キーワード | 捕虜 / 戦争トラウマ / レジリエンス / 英国 / NICE / 対日感情 / 和解 / 補償 |
研究概要 |
当年度においては、昨年に繰り越した額面で、新たな面談を行いかつデータを保存する除湿保管庫を備え付けて、本科研で資料として用いる、過去のインタビューテープを整理し、長期的保存が可能な状況にした。また、今後集まるであろうデータ、および将来のデータベース化に向けての準備を行った。日本人関係者のオーラルヒストリーは当事者の事情から、次年度にまとめて行うこととなった。そのため、渡英し、森教授の推奨を経て、ロンドン大学の精神医学科教授と懇談した。戦争とトラウマの書籍を、捕虜のトラウマや身体症状をまとめ、彼が発表した論文(オックスフォード医学論集)について検討した。(1)捕虜たちを診察した過去のデータ、(2)英国の医師達が診察してがまとめてきた論考(3)当方及び精神科医が把握してきた捕虜の実情について、過去の医学データと、現在の捕虜の状況とを比較検討した。英国人元捕虜たちの「我慢・忍耐」をレジリエンスと捉えるか検討した。その後、元捕虜たちが発行していた雑誌の中から、国が与える福利厚生の内容を抜粋・検討したところ、医師側・福利厚生システムと、患者側の実情や情報理解に齟齬を発見した。なお、元捕虜や抑留者のPTSDを検討する際に使われる指標として、米国由来の「DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」と英国政府が採用する「NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence」のトラウマ/PTSDガイドラインについて教授とディスカッションを行った。これら、目に見えないトラウマへの指標が、英米捕虜・戦争経験者のトラウマ判定・福利厚生・元捕虜たちの日本を赦せないという感情の発露・抑制・解消や心理的な和解にどう関連するかが、引き続き検討課題となった。
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