研究課題/領域番号 |
21320116
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
吉川 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (60321626)
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研究分担者 |
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (30212319)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中村純一寄贈文書 / 興福寺承仕 / 天誅組の変 / 奈良の明治維新・廃仏毀釈 |
研究概要 |
本年度は、現在東大寺図書館が保有している中村純一寄贈文書の、目録の校正作業を進めた。また、明治維新期の日記の翻刻・校正作業を進めた。また、東大寺図書館の都合により、東大寺図書館における調査が本年度内に完了できなかったため、繰越申請をおこない、平成25年度にも調査を実施し、原本校正・写真撮影等を実施した。それらの知見を総合して、論考執筆、編集作業等をおこない、科学研究費補助金研究成果報告書の第1冊として公刊した。 その報告書には、中村純一寄贈文書に関する調査研究内容を取りまとめた。具体的には下記の通りである。 第1部論考編:「中村純一寄贈文書の調査と概要」・「中村家の人びと―中村純一寄贈文書にみる―」・「天文二年以来承仕中系図并臈次書について」・「近世興福寺領公物方の村と唐院・新坊」・「中村栄純(宗円)の奈良府出仕」・「近世興福寺における境内保守整備の一様相」・「近世南都楽人と春日社・興福寺」・「興福寺寺中寺外地図面」・「文久二年七箇夜御神楽御執行之図」 第2部史料編:明治維新期の日記の釈文を掲載した。具体的には、文久3年の天誅組の変の際の日記・慶応4年日記の全文と、安政7年~明治6年の日記の要点のみを記した見出しである。 第3部目録編:中村純一寄贈文書全点の目録を収録した。新修東大寺文書聖教第15函・第35函・第43函・第44函・第56函・第75函・第93函・第99函にあたる。 この報告書により、下記の点が明確になった。1.中村家は興福寺の承仕をつとめた家柄であり、中村純一寄贈文書は、その分家に伝わった文書である。2.その内容は、承仕の職務に関わる、寺領経営や寺内修繕等の関係の文書が主体で、年代は大半が江戸時代後期である。3.詳細な日記が存在しており、特に、明治維新期の日記は、史料的価値が高いと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所蔵者である東大寺図書館の都合により、調査時期が後ろにずれることとなった。しかしその分、史料翻刻等に時間を割くことができた。よって、中村純一寄贈文書については、それなりに時間をとって検討することができ、報告書も公表できた。一方、中村純一寄贈文書以外の文書群については、調査・検討する余裕がやや少なくなった感はある。
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今後の研究の推進方策 |
科研の成果としては、科研報告書を2冊刊行する。1冊は平成24年度事業の『<東大寺図書館所蔵>中村純一寄贈文書調査報告書』であり、1冊は平成25年度事業の『<東大寺図書館所蔵>新修東大寺文書聖教調査報告書 第46函~第77函』である。しかし、それでも新修東大寺文書聖教の一部に過ぎない。全貌を明らかにするには、さらなる調査計画を考える必要がある。
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