本年度も前年度から継続して、東大寺図書館が所蔵する、新修東大寺文書聖教を調査した。また重要史料の写真撮影をおこなった。ただし、本年度は最終年度であるため、従来調査した内容の、原本に基づくチェック作業に重点を置いた。写真撮影も、論考執筆の上で必要と思われる史料を最優先で撮影した。 日常的にも、目録の体裁の統一・内容の検討をおこなった。そして報告書刊行のために、論文執筆作業をおこなった。その結果、本科研の研究成果報告書第2冊として、『<東大寺図書館所蔵>新修東大寺文書聖教調査報告書 第46函~第77函』を公刊した。 そこには、新修東大寺文書聖教第46函~第77函の目録を納め、また、論考を掲載した。論考は下記の通りである。 「新修東大寺文書聖教第四七函~七七函の調査と概要」・「新修東大寺文書中の中世後期周防関係文書」・「世親講供料引付について」・「南北朝期東大寺の強訴と仁和寺―康永四年九月日仁和寺牒写―」・「近世の東大寺真言院の一側面―性善和尚関係史料の紹介―」・「防州国庁寺境内建物図」・「防府天満宮棟札写について」・「光覚知識経の包紙」・「近世東大寺法会に関する試論」。 この報告書により、明らかになった事実は下記の点などがある。1.未紹介の中世東大寺関係文書を発見し、その一部をくわしく検討した。2.近世東大寺の僧侶・法会の実態の一端を明らかにできた。3.現在東大寺図書館に存在している文書が、元来、東大寺のどの組織で保管されていたものなのかが、ある程度明らかとなった。
|