平成24年度は、研究実施計画に沿って、阿波国山間部(現徳島県神山町周辺)、信濃国松代藩領(現長野県長野市)の調査・分析を並行して進めた。 阿波国については、平成24年8月6日~7日に現地調査を行った。調査では、神山町郷土資料館において、所蔵史料の閲覧と写真撮影を行い、あわせて神山町・徳島市などにおいてフィールドワークを行った。この調査では、史料の記載内容とフィールドワークで得られた知見とを総合することによって、近世の山村における生業交流についての研究を進展させることができた。 なお、神山町郷土資料館に収蔵されている近世文書は厖大な量にのぼり、2日間ではとてもすべての閲覧・撮影が不可能だったため、別途、四国工業写真株式会社に近世文書のデジタルデータ作成業務を依頼し、必要なデータをすべて入手することができた。このデータの分析により、近世の山村における生業交流の具体相について、さらに多くの重要な知見を得ることができた。 信濃国松代藩領については、平成25年3月27~28日に現地調査を行った。調査では、北長池区の公民館に保管されている区有文書の閲覧・撮影を行った。また、国文学研究資料館(立川市)に所蔵されている松代藩真田家文書の分析を行い、村方文書と大名家文書の記載内容を突き合わせることによって、近世農村における生業交流の具体相と、生業構造に藩の政策が与えた影響についての考察を深めることができた。 また、以上の調査・分析の成果を共有し、各自の研究をさらに進展させるために、インターネットを利用して頻繁に意見交換を行った。こうして、山村と農村を比較しつつ、生業交流という新たな視点から近世社会の特質を検討できたことは、近世史研究の進展にとって重要な意義を有するものである。
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