研究課題/領域番号 |
21320123
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
井上 寛司 島根大学, 名誉教授 (40027967)
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研究分担者 |
山岸 常人 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00142018)
小林 准士 島根大学, 法文学部, 准教授 (80294354)
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キーワード | 中世出雲国 / 出雲大社と鰐淵寺 / 出雲国一宮制 / 神仏隔離 / 神仏習合 / 顕密寺院 / 蔵王信仰 |
研究概要 |
前年度に引き続き、5つの研究班に分かれてそれぞれ基礎的データの集積と調査・研究を行った。〔文献班〕では、前年度に続いて寺内及び周辺部を中心として近世初頭の「神仏分離」以前の鰐淵寺関係文書の収集(これまでに655点の所在を確認)とデータ入力、及び可能な範囲での原本校正作業を行った。〔建築班〕では、寺内主要建造物の実測調査と図面作成、及び一部の庭園調査を行った。〔美術班〕では、新たに周辺部をも含め、鰐淵寺所蔵・旧蔵の仏像・仏画・仏具等の詳細な実測調査と、これまでに調査した寺宝類すべての精密な写真撮影を行った。〔考古斑〕では、出雲市文化財課と協力して和多坊跡の発掘調査を実施するとともに、別所・唐川地域の現地踏査と別所地域の測量調査、及び境内の石垣・石造物調査を行った。〔自然環境班〕では、前年度に続いて古絵図や現地踏査による古道の復元と、土壌の微粒炭分析による植生史の調査・分析を行った。 以上の調査・研究によって得られた成果とその重要性として、とくに次の4点が指摘できよう。(1)鰐淵寺(北院)の中心的僧坊である和多坊の創建が13世紀であることが明確となった。これは、現在の景観の歴史的起点が13世紀に遡ること、北院の所在地が唐川ではなく別所地域で、南院の所在地は別に求める必要があることなどを明らかにした点で、鰐淵寺の歴史的解明に極めて重要な意味を持つと評価することができる。(2)現存する寺内主要建造物の創建年代が初めて解明され、根本堂や本坊の建築学的特徴や重要性が明確となったのも重要である。(3)仏像・仏具等が12~13世紀に集中する傾向があり、鰐淵寺の創建と密接な関わりのあることが明確となったのも重要である。(4)摩陀羅神社の創建が「神仏分離」と同時で、中世の本尊=蔵王権現像が一体も残されていないのもそれと密接に関わることが推定できるのも重要であり、注目される。
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