本研究の目的は、大量の新出史料が発見された賀茂別雷神社文書の紹介とそれを素材とした中近世移行期の賀茂社・賀茂六郷および京都地域に関する研究である。 今年度は、研究素材を確保し、かつ研究終了後の公開にそなえるため、新出の算用状類を中心としたデジタル撮影を実施した。史料の傷みが甚だしくまた費用等の制約もあって、撮影は当初の予定通りには進まなかったが、算用状類の中核をなす職中算用状については慶長年間分までの撮影を終了した。高画質のデジタル画像は朱筆や追筆の多い算用状の分析に適しているのみならず、デジタルデータが確保できたことにより、今後様々な解析が可能となる。 算用状以外については、京都府教育委員会撮影のマイクロフィルムを貸借し、必要史料の焼き付けを行った。これらをもとにした3つの研究班での具体的な研究成果は今後に期するところ大であるが、撮影データをもとにした氏人データベースの作成作業にはすでに着手している。 これ以外に、旧社家の鳥居大路家文書(賀茂社所蔵)の原本調査を実施して目録を作成したほか、東京大学史料編纂所の撮影・架蔵になる約100冊の賀茂別雷神社文書写真帳(1970年代撮影)について、京都府教育委員会の悉皆調査を基に作成した新目録との対照調査を行い、本研究で利用する際の基盤を整え、今後の利用の便宜を図った。
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