平成24年度は、賀茂別雷神社文書の撮影・公開と中近世移行期の賀茂社・賀茂六郷および京都地域の研究を目的とした本研究の最終年度である。 賀茂社文書の撮影であるが、新出文書を多数含む職中算用状については中世~近世初頭分は撮影を終えた。ついで、賀茂社・氏人による賀茂六郷の領有・支配構造と収取体系の解明のために必要な田地指出や検地帳などの土地関係文書を個別にピックアップし順次撮影を行った。 こうして得られた分析素材をもとに、志賀節子、高橋敏子を中心に賀茂社による膝下六郷の収取制度と支配構造について分析・議論した。その結果、六郷に賦課される数種の本役公事(神事用途別、人別、社寺別)と御結鎮銭の賦課の在り方と特質、戦国期に至り本役収取システムが破綻をきたすなかで賀茂社は収取の重点を前者から後者へと移し、それにともなって土地台帳の様式・内容も変化することが明らかになり、賀茂社領支配構造の研究を一歩前進させることができたと言える。また賀茂社文書分析の基礎的データとして、金子拓が戦国期の氏人一覧を作成したのをはじめ、イエール大学が所蔵する天正年間の西賀茂検地帳の翻刻・分析等も行った。 これら研究成果は報告書(研究論文5、氏人一覧1ほか)としてとりまとめ、年度末に刊行した。研究期間は終了したが、今後若干の残務整理を行ったうえで、4年間に撮影した賀茂社文書の画像データを公開に向けて賀茂社等と協議・調整し、早期の公開を期したい。
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