本年度は、6月の研究会と夏の海外調査を中心に共同研究を進めた。 6月26日27日の両日にわたって行われた研究会では、共通テーマ「都城空間をめぐる諸問題」をもとに研究代表・連携研究者を含む科研のメンバー9名全員が中国・朝鮮・モンゴル・日本の都城についてそれぞれ研究報告を行い、都城空間の形成過程や景観認識について比較史的考察を深めた。また海外調査の打ち合わせと事前準備を兼ねて、連携研究者の中村と渡辺が調査予定のモンゴル都城に関する近年の研究成果の概要を紹介し、共通理解を得た。 夏のモンゴル国都城踏査は、8月29日から9月7日までの日程で、オルホン河流域に展開するカラコルム遺跡、エルデニ・ゾー、ホショー・ツァイダム、ハルバルガスンの遺跡を中心に踏査した。とくに、カラコルム遺跡の踏査やモンゴル科学アカデミーの考古研究所とドイツ国による合同の発掘現場の見学により、元の上都や大都に直接つながるモンゴル帝国時代の都城遺跡に止まらす、それ以前のウイグルや突厥時代までも視野に入れてモンゴル国の都城史の展開をたどる必要性を痛感した。今回の調査では、元科学アカデミー歴史研究所所長・元国立歴史民族博物館館長のオチル氏の周到な案内のお陰で、限られた日数であったが極めて効率よく踏査することができ、遊牧地域に建設された都城について多くの知見を獲得することができたのは大きな成果であった。また中村の紹介で科学アカデミーの歴史研究所と考古研究所の研究者とも交流することができたことも有益であった。 さらに1月には、山口大学で連携研究者の橋本を研究代表とする科研主催の研究会に加わって、東アジアの遷都論について議論を深めた。
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