最終年度となる本年度も、6月の研究会と夏の海外調査を中心に共同研究を進めた。 6月25日26日の両日にわたって行われた研究会では、共通テーマ「宮城空間をめぐる諸問題」をもとに研究代表・連携研究者を含む科研のメンバー8名が中国・朝鮮・日本の都城の宮城空間に関わる諸問題についてそれぞれ研究報告を行い、宮城空間の機能とその変遷について様々な角度から比較史的考察を深めた。また夏の海外調査の打ち合わせを行った。 9月6日から9月14日までの日程で行われた中国河北・内蒙古都城遺趾調査では、明土木塗(河北省懐来県)、元中都(張北県)、察罕脳児行宮(沽源県小宏城)、元上都(内蒙古正藍旗)、応昌故城(克什克騰旗)、遼上京・祖陵(巴林左旗)、遼中京(寧城県)の遺跡を踏査することができた。 とくに、柴立波氏の案内により元中都遺趾址と元中都博物館を見学、董新林氏(社会科学院考古研究所)の案内により遼上京城遺趾の発掘現場を見学できたことはとても有益であった。今回の調査に参加した海外研究協力者の成一農氏(社会科学院歴史研究所)には、調査都城遺趾に関する中国側資料の収集にあたり多くの協力を得た。 この間の共同の研究会と海外調査により、隋唐の長安城でいったん完成の域に達した中国都城が北方の遊牧的要素に加えて江南の経済発展の影響をも吸収しながら、明清の南京城や北京城において近世都城の完成段階に至るという、中国都城史の展開に関する大まかな道筋が確認できたことは大きな成果である。
|