研究概要 |
3年目の平成23年度は,引き続きソグド人の東方活動に関する史・資料および関連研究文献の収集と海外調査を実施した。 まず,海外調査では,森部・山下(研究分担者)・福島(連携研究者)の3人で,5月に中国甘粛省の調査を行った。ここでは,蘭州・楡林石窟・敦煌莫高窟に残るソグド関係の題記の調査,武威でのソグド人関係の石刻史料およびソグド人が植民聚落を形成していた河西地域と諸都市の景観調査に従事した。 8月には岩本(連携研究者)が,パリとロンドンにおいて敦煌文書と印章などの調査に従事した。 森部は,個別に10月から11月にかけて,アメリカのニューヨークとワシントンに赴き,アメリカに流出した中国出土のソグド人葬具を調査した。 2月には影山(連携研究者)がインドへ赴き,アジャンター石窟寺院に残るソグド人壁画の調査に従事した。これは,当初,計画になかった調査対象であるが,美術史家の影山によりリサーチの結果,ソグド人の東方活動の一環として把握できるものであることが明らかとなり,急きょ実地に調査した貴重な西夏である。 2月~3月にかけて中田(研究協力者)がパリとロンドンへ赴き,文献史料の調査,資料収集に従事した。これで,森部と影山を除くメンバーの海外調査および海外における資料収集は終了した。 資料と関連研究文献の収集に関しては,特に中国において関連する資料を購入すると同時に,中国で出版される石刻史料にも留意し,継続的に購入を行った。 研究員相互の情報交換に関しては,メールでの交信を中心とし,調査結果報告・概要,スケジュール確認などを行うと同時に,研究員の一部は,学会などで口頭発表をおこなった(遼金西夏史研究会で中田,中央アジア学フォーラムで山下)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査を通じての史料の確認・分析・収集の側面は順調に進展している。と同時に,新たな情報が追加され,その調査を行っている。調査や国内作業による資料収集が進捗し,個別研究成果の発表が進む一方,その整理が追いつかないのが現状である。『ソグド研究史』の執筆のための資料収集も着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ソグド人の東方活動に関する史料(石刻史料を中心とする)の解題を含むデータベース化は,それを構築するための諸費用の問題もあり,本研究から切り離して,別のプロジェクトで実施する。この件は現在,すでに進行しており,数年以内に暫定的公表し,2015年までに完全公開する予定である。最終年度は,残された海外調査の課題の遂行と4年間の調査・研究成果を研究集会の場において公表することを目標とし,「ソグド研究史」の完成は,2013年度以降に持ち越すこととする。
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