最終年度は、①ソグド人の東方活動を明らかにするための補助的調査、②関連論文の収集と文献一覧の作成、③4年間の研究成果の集約と研究成果報告書の作成を行った。 ①については、ロシアのサンクトペテルブルクにあるソグド関係の資料(壁画、出土文物など)を調査し、またフランスにおいて欧州におけるソグド研究の状況を調査した。②については、日本・中国・欧米で発表されたソグド人に関する研究、特に東ユーラシアにおけるソグド人についての研究を網羅的に調査し、それらを収集すると同時に整理し、ソグド研究に関する文献表を作成した。ただ、まだ草稿の段階にとどまり不十分であるため、公刊は見送った。③東ユーラシア世界においてソグド人が果たした役割をとらえなおすために、新出の石刻史料とソグド人の墓葬資料(石棺牀など)に着目し、それらを可能な限り、現地において実物を検分し、既発表のものならば録文と対校し、正確な史料作成を行い、研究成果を提出した。森部は、突厥の影響を受けたソグド人(ソグド系突厥)の実態と東ユーラシア世界における具体的活動を、石刻史料から明らかにし、安禄山について研究成果を発表した。山下は、北朝~唐前半期のソグド人の活動を軍事面から考察し、当該時期の政治史にソグド軍人が深く関わっていた新事実を明らかにした。岩本は、自身が関心を持つ敦煌文書とその周辺研究領域ともいうべき吐魯番文書にも目をむけ、それらを利用した近年のソグド人研究の整理を行った。ソグド美術の専門家である影山は、北中国で発見されたソグド人石棺牀に関する研究の整理を行った。福島は、個々のソグド人墓誌の詳細な解釈とそれをもとにした研究とにより、ソグド人の東方活動の一端を明らかにし、洛陽で再「発見」された景教経幢に関する研究成果をあげた。唐代の政治史と仏教史を専門とする中田は、そこに介在したソグド人に着目し、研究成果を発表した。
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