研究課題
本研究の目的は、研究代表者と分担者が、研究協力者(海外共同研究者)の協力を得つつ、10世紀以降の中世南インドのタミル語およびカンナダ語の、マタ(僧院)に言及する刻文を検討し、先行する時期に生み出されたヒンドゥー教の新理念が、当該時期における宗教運動の展開とどう関連し、社会の変化とどう関わり合ったのかを明らかにしようとするものである。それは同時に、当該時期に北インドからもたらされたサンスクリット文化が、南インドで、その地の文化とどう作用し合ったかという、インド亜大陸北部と南部の間における、文化的相互作用の究明にも資するものである。22年度には、収集、分析を予定していた14世紀のタミル語マタ刻文の数が予想を下回ったので、その後の状況をも把握すべく、18世紀前半までの刻文を調査して、マタ刻文の収集、分析を行った。収集作業は研究代表者がインドの研究協力者スッバラーヤル・シャンムガム両教授とともにマイソールの刻文史料編纂所に赴いて行い、コチでの読解作業に続けて、分析は両教授に来日してもらい、日本で行った。その作業は順調に進展し、マタを舞台とした宗教運動は13世紀が中心であり、その結果、新しい宗派、タミル・シャイヴァシッダーンタ派が成立したという重要な事実を明らかにすることができた。分析結果をまとめた論文は23年4月初めに完成し、目下、インドの研究誌に投稿中である。カンナダ語刻文については、研究分担者がインドに赴いて更なる収集を行い、分析作業を進めている。なお、22年度には、デリー大学のジャー教授に来日してもらい、中世南インドの宗教運動についてセミナーを行う予定であったが、教授の健康状況から中止となり、その分、上述の14世紀以降のタミル語刻文の収集、分析を進展させた次第である。
すべて 2010
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Indian Historical Review
巻: Vol.37, No.2 ページ: 217-234