研究概要 |
本研究の目的は、研究代表者と分担者が、海外共同研究者の協力を得つつ、10世紀以降の中世南インドのタミル語およびカンナダ語の、マタ(僧院)に関する刻文を検討し、伝統文化や先行する時期のヒンドゥー教理念が、その後の宗教運動の展開とどう関連し、社会変化とどう関わり合ったのかを明らかにしようとするものである。それは、北インドのサンスクリット文化と南インドの伝統文化の間における、文化的相互作用の究明にも資する。 21年度には、10-13世紀の刻文を調査し、マタの活動を検討した。その結果、13世紀に活動が活発になり、北インドのサンスクリット文化による南インド伝統文化の触発と相侯ち、新たにタミル・シャイヴァシッダーンタ派が成立したことを明らかにした。その結果はIndian Historical Review,37-2(2010)に発表した。22年度には、14世紀以降の刻文を調査し、10-17世紀におけるマタ活動の変遷を明らかにした。その結果、マタ活動のピークは13世紀で、シャイヴァシッダーンタ派の成立は、当時の社会変動と密接に連動していていることが判明した。成果はIndian Historical Review,38-2(2011)に発表した。 以上を踏まえ23年度には、刻文史料を全体的に今一度精査すると同時に、これらの資料を今後の研究に役立てるべく、関連刻文の全体を、その簡略な内容他の情報と共にデータベース化する作業を行った。さらに、以上の成果を学界で共有すべく、ドイツのクルケ教授と、スリランカのパドゥマナーダン教授を招聘し、日本の研究者との交流を図った。クルケ教授は東京と京都で、東南アジアとインドにおける古代・中世の国家形成について、パドゥマナーダン教授は東京で古代・中世スリランカにおける国家と宗教の問題について講演し、参加者全員で今後の研究の在り方について論じた。それらは、データベースと共に、出版したく考えている。以上のように、23年度の研究は、滞りなく遂行された。
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