昨年度の研究実績を踏まえて、今年度はイングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズのそれぞれについて司教区、教区の成立に焦点をあてて研究史の整理と史料の読み込を行い、その成果を論文集にまとめるために、研究実施計画にもとづいて下記の準備を進めた。 ① 5月に上智大学において第1回の研究集会を行い、24年度の研究の方向性を確認した。 ② 8月に約10日間の日程でアイルランドにおいて中世の教会史跡などの現地調査を実施した。とりわけ、アイルランド南西部のディングル半島を中心とした初期キリスト教史跡は、これまでほとんど研究されてこなかった地域であり、その調査結果を今後の研究に反映することが期待される。 ③ 1月に城崎町において第2回の研究集会を行い、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドについて、それぞれの司教区、教区の成立過程と相互の関連性、相違性について報告を行い、ブリテン諸島におけるポスト・ローマ期の教会組織の全体像とその構造的差異を検証した。その結果、ブリテン諸島の初期教会組織に関する研究史に関する「再検討論」の中心となるアイルランド「修道院制度」(monasticism)について、さらなる検証が必要であることを確認した。 ④ 3月にお茶の水女子大学(東京都)において第3回の研究集会を行い、先の研究集会において課題となったアイルランド「修道院制度」について、田付秋子氏の報告をもとに12世紀の教会改革で攻撃された「世俗化」の諸相とその歴史的意味について検証し、理解を深めた。
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