研究課題
本プロジェクトの目的は「最上級貴族層の支配の領域化、支配圏の形成、発展と衰退の過程を貴族諸階層の公的秩序の維持機能に着目して解明すること」にある。この問題は中世的な権力構造全体との関係ぬきにしては解明できない課題である。その意味で本プロジェクトの課題はその推進母体でもある「ヨーロッパ中世史研究会」の「中世における権力構造のヨーロッパ的特質を明らかにする」という本来の目的と合致するものであり、メンバーを殆ど同じくする前回の基盤研究(B)「中世ヨーロッパの権力構造とアイテンティティー複合」(2006-2008年度)を継承・発展させるものである。そこでは国家・王権レヴェルで「統合と調整」の問題を扱ったが、本プロジェクトでは貴族諸階層に焦点を当て、地域レヴェルで、より具体的にそのあり方を研究するものである。2009年度は先ず前回のプロジェクトとの連関を重視し、本プロジェクトのメンバーが中心となって『法制史学会』総会においてシンポジウムを企画した。それは前近代の「議会」における合意と決定のプロセスを通して、諸集団間の「調整と統合」の実態を明らかにしようとたもので、多くの参加者を得て活発な質疑・応答がなされ、歴史学と法制史学との間での視点の共有がなされた。また、中世の貴族制研究に関しては2009年度は「ヨーロッパ中世史研究会」の例会を場として2度の研究集会を開催した。(1)ビザンツの帝国統治における修道院=聖界貴族の果たした役割、(2)シャテルニー(城主支配圏)の形成と封建的権力構造の変容との連関を明らかにしようとしたものである。それとは別に、初年度は各分担者において、貴族制に関する研究史、研究動向を踏まえ、具体的なテーマの設定を目指した。各分担者とも科研費の多くを問題提起的な研究書の購入に充てるとともに、実証的な研究成果を挙げるうえで不可欠な歴史史料の収集も精力的に推進した。ヨーロッパの現地での未刊行史料の収集も積極的に手がけ、2010-11年度に本格的に展開する研究活動の基盤を確立することができた。
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