研究概要 |
本研究の中核を成す、青森県下北半島にある尻労安部洞窟(安部遺跡)の調査では、前年度までの7年間に、次のような成果が得られている。 第1段階(1・2・3層)弥生時代~縄文時代中期人骨・動物骨を含む各種の遺物多数 第2段階(4層)縄文時代早期8,770±50calBP土器・石器・動物骨各種 第3段階(12層)23,409±119calBP(13層)33,884±160calBP (13~15層)大型偶蹄類と思われる臼歯歯冠破片 (15層)旧石器時代ナイフ形石器ウサギの歯 平成21年度は夏の調査に先立ち、安全対策として、調査区の真上にオーバーハングしている石灰岩に大規模なネットを張り巡らす工事を行った。さらには微細な遺物の発見漏れ(サンプリングエラー)防止のための水洗選別の作業をより充実させるべく、調査現場ちかくにタンクと給水設備を整えた。 約2週間の発掘調査の結果、上記第3段階の昨年と同じ15層から新たな頁岩製ナイフ形石器と複数個体のウサギの歯を、原位置において多数とらえることに成功した。このように、石器と動物骨が比較的まとまった範囲に確認できたことによって、出土動物へのヒトの関与の可能性がより高いものとなった。また、第3段階における偶蹄類の歯、焼骨、ムササビに類するリス科の歯の存在を加えると、本遺跡における旧石器時代の人類活動の証拠がより多様で明確な形で得られた、といえる。
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