研究概要 |
本研究は、土器製作者の個人同定法の確立、方法のさらなる開発・改善、実資料への応用による考古学的に高次な問題の解明等を目的とするものである。平成22年度は、前年度の研究に引き続き、同一工具痕等の特定の方法や同一製作者の同定・識別について更なる調査・実験を進め、併行して、工具痕のつき方等の再現実験を実施した。土器表面工具痕の3Dデータ等を用いた立体的マッチングでは、須恵器や縄文土器等の工具痕へも拡張して立体的マッチングの成功例を増やしたほか、その過程で、工具が滑った痕跡等の細かな手の動かし方を復元する手掛りとなりそうなものを見出すことができた。本研究では、考古学、自然科学、民族考古学等の多角的方法を用いるところに特徴があるが、蛍光X線分析による胎土・素地の分析により、未解明であった個人と胎土との関係等を知る手掛りが得られた。本研究には工具痕等の痕跡や胎土の一致度等の評定だけでなく、身体技法からの検討が重要であるため、タイ北部で伝統的土器製作者に関する現地調査を研究協力者とともに実施し、身体技法と痕跡との間の関係、個人と素地土との関係等について多くの基礎的データを得た。その際、モーションキャプチャによる土器製作者の身体技法の記録と動作解析の一部に成功したのは特筆できる成果である。なお、11月にInternational Conference on Japanese Ceramics : Makers, Tools, and Pottery Throughout the Agesで、成果発表会を兼ねて本研究課題に関するセッション「Session 2 : Identifying Pottery Makers」と「Session 3 : Scientific Analysis of Ceramics」を立ち上げ、討論した。多角的検討により研究が進展しつつある。
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