・青田遺跡においては、年輪の詳細な検討により各建物間の年代関係、伐採季節をかなり絞り込むことができた。この結果をもとに、建物周辺の堆積物層を1年精度で年輪年代の時間軸に合わせられる可能性が見えてきた。 ・青田遺跡の建物の高精度な暦年代の決定と年輪年代の結果の正しさの検証のために、年輪年代クロノロジーを構成する年輪数160年のクリ自然木について14Cウイグルマッチングを実施した。その結果、この自然木の最外年輪の暦年代が95%区間で590-530calBCに含まれることが示された。この結果は先行研究で得られている年輪クロノロジーに含まれる青田遺跡木柱の年代と大きな矛盾はないものの、十分な精度での年代決定に至っておらず、更なる追加試料を分析中である。 ・縄文時代の果実利用との対比として実施した三面地域における民俗学的調査では、クリは堅果類の中でも主食を補うのに極めて利用頻度が高く、他の堅果類には見られない採集の解禁日である「口開け」が設定されており、砂グリの保存処理をしてカテゴハンとして食されたことが明らかになった。 ・小国町金目と村上市三面で実施したトチノキ花粉の飛散調査では、トチノキ花粉がブナ科の樹種の中でも際立って飛散し難いクリと比べてもさらに飛散が少なく、遺跡でのトチノキの分布や母樹の位置の推定を空間的な花粉分析により解明できる見通しがついた。
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