研究課題/領域番号 |
21320152
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研究機関 | 財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
狭川 真一 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30321946)
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研究分担者 |
山口 博之 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 客員研究員 (90470278)
中島 恒次郎 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 客員研究員 (30510177)
勝田 至 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 客員研究員 (90211846)
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キーワード | 考古学 / 歴史考古学 / 葬送墓制 / 石塔 / 墳墓堂 / 副葬品 |
研究概要 |
本年度は「土葬墓の副葬品からみた葬送儀礼の復原研究」について、12月に福岡県で研究会を実施した。考古学分野から4人の発表者を得て、西日本各地の様相を整理してもらい、文献史学の立場からも関連資料を整理してもらった。考古学では遺構とそこから出土する遺物(土器・陶磁器)の配置状況を検討することで、当時の作法の一部が見えてきた。また凡西日本的に共通した作法に基づいて行われているものもあり、その背後には宗教者の関与が指摘できる。文献史学の側からは考古学的に認識できるであろう課題の抽出をお願いしたが、有機質の副葬品も多くあり、発掘調査では見出しにくい資料が多いことも認識できた。 また火葬の問題については、インド国バラナシ市のガンジス川沿岸で行われているヒンズー教の屋外での火葬を調査した。写真撮影は許されなかったが、屋外で火葬を実施する様相や使用燃料の状況など有意義な情報を得ることができた。その点で考古学的にその痕跡を見出すことの難しさを実感したほか、日本における古代・中世の火葬の場所についても再考を要するものと認識した。 石塔と墓の関係については、各所で関連する石塔の調査を実施した。特に大型の石塔が群を形成する墓地が注意され、中世の武士階層のいかに形成されていくかを考える必要性を痛感し、次年度は足利市樺崎寺跡を舞台に関連する研究者を集め、研究会を開催する準備が整った。 火葬人骨の課題は分析資料の抽出を行い、墳墓堂の研究は上記の足利市での研究会で関連付けた成果を公開予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題5件を掲げているが、うち4件については(2)であり、成果もあがっている。ただ、火葬人骨の問題に関しては、最良の資料(分析に値する情報を有するサンプル/壷の年代、人骨の残存状況、炭化物の試料化など)を抽出することができていない。候補を見直して検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には計画に大きな変更はなく、順調と言える。なかでも石塔と墳墓の関係研究では、中世後期の石塔・石仏と墓の関係についてはデータを蓄積中であるが、調査を進めるなかで多くの課題が見出されており、来年度には中世の前半期で大型の石塔群に注目して発展させることで、中世武士の墓に関する実態が明らかとなり、武士の領地支配を視覚的に正当化する装置としての役割を明確化させてゆきたい。 墳墓堂と副葬品については、すでに研究会を実施し、問題点は整理した。その成果に立脚して、今後への展開を検討中である。
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