本研究は、GIS(地理情報システム)の手法を古代山城の分析に活用するための基礎研究である。自然地形と密接に関わる古代山城の立地は、可視領域などのGISによる空間分析が大いに期待できるからである。そのためには詳細な微地形データに土塁線の状況が示されなければ、GISの分析は不可能である。しかしながら、国内の22の古代山城は外郭線(土塁)が約2~8kmと規模が大きい。しかも土塁の構造は、万里の長城のような明確な城壁ではなく、多くが丘陵斜面に積み土して、外壁のみ整えた内托式と呼ばれる形態である。場合によっては土塁を一部では急斜面を削って上面に平場を設けただけの箇所もある。したがって、これまで城の全体を正確に把握するのは容易ではなかった。 そこで、本研究では、昨年度から航空レーザー計測による地形把握と、GPS機器による現地測量によって、正確な地形と土塁線の図を作成し、古代山城を読み解く試みに挑戦している。本年度は、より詳細な地形把握を目指し、50cmメッシュの標高モデル(3次元地形起伏図)を作成することにした。 今回はヘリコプター(回転翼)で計測した。ヘリ計測であればスピードを遅くすることができるため、それだけ地表を密度高く捉えることができるのである。こうした大規模遺跡の把握への応用は初の試みであったが、事前の現地での打合せ等をおこなうことで、山口県光市所在の石城山神籠石についての正確な標高モデルを作成することができた。この3次元地形起伏図に、ハンディGPS機器による土塁の測量を実施して、土塁線を確定させることができた。さらに昨年度作成した大野城の3次元地形起伏図に、江戸時代の古地図を重ね合わせる作業を行った。その結果、古地図に注記のあった門跡とおぼしき遺構を新たに発見することができた。 今後も古代山城の調査にこうした成果を活かすことで、新しい研究の基盤を作り上げたい。
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