2009、2010年度は、フィリピン人移住者に関する文献資料収集と、研究者・移住者の支援者との意見交換を国内各地と、韓国、台湾、米国、ギリシャで行った。ギリシャでは、フィリピン人を中心とした移住者の支援者や研究者が世界中から集まり(g-c-7-2学会発表11参照)、多様な視点に接触する機会を得た。2010年からは、同様の調査をしている高畑幸氏(広島国際学院大学)を共同研究者として迎え、日本各地で展開しているフィリピン人雇用の状況把握のためのデータ収集を拡充できるようにした。 国内のフィールド調査は、主として英語教師、介護者(在日及び経済連携協定=EPA)と、後者の支援者・雇用者を中心にインタビュー、参与観察、ラポール形成を行った。介護者に関しては、多様な受入れ経路についての知見を得られ、また、在日と来日の日本の国家資格取得に向けた方策について情報を得ることができた。とりわけEPAの受入れについては、関西圏の受入れ先が積極的に支援をしていることが判明し、こうした団体との一定のラポール形成ができた。福祉業界の閉鎖性が指摘される中で、このラポール形成は重要である。EPAは現在進行中であり、今後もこうした団体とそこで研修中の介護者の実態について、より詳細なデータ獲得の努力を続ける。また、EPAとは別にフィリピンから日系人や在外日本人を介護者・一般労働者として呼び寄せる動きが活発化していること分かったので、こうした動きにも注目していく。 英語教師については、首都圏で長期にわたり言語指導・教材販促に関わるフィリピン人と接触することに成功した。こうしたリーダー的存在が英語教師養成の牽引者となっていることが判明したので、今後もこれらの人物と連携しながら調査を進める。 また、在日フィリピン人の子どもが多数フィリピンから来日・就労していることが明らかになってきているので、今後はこうした子どもの労働にも着目していく予定である。
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