研究課題
本年度の研究に於いては、主に「立法の正統性保障」に関わる諸論点について、研究代表者と連携研究者相互の間で内外研究動向の展望と研究方針確認を行う傍らで、(1)研究代表者が委員長を務める日本学術会議立法学分科会との間でも共同で情報収集や理論的共同討議を行い、(2)本研究および先行する科研費共同研究の研究成果の一部の中間的・試行的報告を遂行した。(1)については、09年5月と10年1月に立法学分科会と共催で研究会を開催した。前者では本研究の連携研究者でもある橋本努氏より、氏の「自生化主義」に立脚し、法システムが意図せざる発展を遂げる進化に対して開かれた立法過程のあり方を「可謬主義」「熟成主義」の概念を手掛かりに展望した。後者では参議院議員の古川俊二氏の報告と参議院法制局の川崎政司氏のコメントにより、民主党政権における政府・与党一元論や国会法改正等について、政策決定プロセスのあり方としての意義と限界が明らかにされた。(2)については、まず『現代法哲学講義』の刊行が挙げられる。本書は研究代表者また連携研究者のうち石山、奥田、郭、横濱が寄稿しており、内容的にも先行する科研費共同研究においても度々検討されてきた、遵法義務論、世界正義と国内正義との相関など、立法の正統性保障に関わる法概念論、正義論上の問題、また国際的人口移動や臓器移植など立法政策上の論点を取り扱っている。次に09年9月に北京で開催された第24回国際法哲学社会哲学学会連合(IVR)世界大会の分科会にて、研究代表者と連携研究者の瀧川、横濱が世界正義論や遵法義務論に関する報告を行った。さらに研究代表者がlegisprudence誌に批判的民主主義論に基づく論考を寄稿し、連携研究者の安藤は功利主義に基づくアーキテクチャ的統治のあり方を展望する論考を、井上彰が正義論上の諸論点を整理する論考を、さらに瀧川はドゥオーキンの遵法義務論を批判的に検討する英文による論考を含む共著をそれぞれ公表した。横濱は遵法義務論を網羅的に扱う連載論文の第1回分を雑誌に掲載した。
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国家学会雑誌 123
ページ: 65-117
自由への問い7コミュニケーション(岩波書店)
ページ: 72-98
はじめて学ぶ法哲学・法思想(ミネルヴァ書房)
ページ: 152-163
Legisprudence : International Journal for the Study of Legislation 3
ページ: 19-41
Envisioning Reform : Enhancing UN Accountability in the Twenty-first Century(United Nations University Press)
ページ: 73-96