本研究の目的は、急激なグローバル化の進展の中で、一部の研究者が問題視するようになった「民主主義の劣化」という問題を、憲法学の立場から理論的かつ実証的に研究した上で、理論的かつ実践的な対応策を構想しようとする点にある。 本研究では、比較憲法的な研究方法を駆使して、「民主主義の危機」に関する事実認識と規範的評価の是非を明らかにし、その上で、民主主義に関する原理論レベルの研究と、主要国の民主主義の実態に関する比較憲法的研究を通じて、現代民主主義の「危機」の原因を究明し、その上で、「民主主義の再創造」に同けた理論的かつ実践的な提言を行うことを課題としている。 以上の研究課題に即して、平成21年度は、次の研究活動を行った。 まず各国研究に先立って、「グローバル化の時代における民主主義の危機」という問題に関連する既存の研究成果の批判的検討を通じて、この研究に関する問題意識の共有と、この研究の基本的視座の確定・共有を行った。21年9月に静岡県藤枝市で行った研究合宿において、研究代表者の本が、共同研究の問題関心と研究方法に関する報告を行い、研究分担者の愛敬が、共同研究の前提となる「ポスト・デモクラシー」という観念に関する政治理論・政治哲学の議論状況を紹介した。 22年1月の第2回研究合宿においては、「グローバリズム」や「リスク社会論」など、現在の社会科学において重視されている問題から、現代デモクラシーの直面する諸問題を明らかにするための研究報告が行われた。第1回・第2回の研究合宿での検討を前提として、現在、連携研究者は比較憲法的研究の対象についての検討を開始している。 なお、共同研究の成果の一部を紀要等の論文というかたちですでに公表している。
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